| 蛇紋岩マジック/早池峰山ほか |
岩手県の早池峰山はエーデルワイス(厳密にはハヤチネウスユキソウ)で有名ですが、それ以外にも珍しい花がいっぱいある不思議な山です。近くの秋田駒や岩手山、八幡平、焼石など奥羽山系の高山とは花の種類が違いますし、お花畑の雰囲気も少し変わっています。
何故そうなのでしょうか。私なりに大まかにフロラを分析して見たところ、
1.日本アルプス(と北海道)にはあるが、東北地方ではここだけと言う花
タカネウスユキソウ、ミヤマアケボノソウ、ミヤマアズマギク、ホソバツメクサ、チシマアマナ、イワベンケイ、※ミヤマオダマキなど
2.北海道にあって、本州ではここだけ(或いはほぼ南限)という花
トチナイソウ、※チシマツガザクラ、※エゾノツガザクラ、※チシマフウロ、※サマニヨモギ、※ナガバキタアザミ、エゾアカマツなど
3.蛇紋岩に特異的な花
カトウハコベ、ミヤマヤマブキショウマ、※ナンブイヌナズナなど
4.日本中(世界中)で早池峰にしか無いと言う花
ハヤチネウスユキソウ、ナンブトラノオ、ナンブトウウチソウ、※ヒメコザクラなど
の存在が浮かび上がって来ます。
ミヤマオダマキ(左)とハヤチネウスユキソウ ナンブイヌナズナ
写真はいずれも1987/07/05撮影。 ミヤマヤマブキショウマとミヤマオダマキ
(ヨツバシオガマ、ハクサンチドリ、
ミヤマアズマギクなども見える)ナンブトラノオとキバナノコマノツメ
こういった花達の絶妙な取り合わせが、東北地方では珍しい岩だらけの風景と相まって、他の山とは違う何か異世界に迷い込んだような雰囲気を醸し出すのでしょう。
同じような印象はアポイ岳(北海道)でも感じました。
両者の共通項は超塩基性岩(蛇紋岩、かんらん岩など)が露出している点です。
こういった地質の場所では、山の高い低いに関係なく、廻りとは一風異なった植物景観が発達することは、昔からよく知られてました(参照:愛知県新城市のケース)。
その理由は、既に拙サイト、アポイ・コレクション2の冒頭で述べた通りです(更に詳しくは「土のお話・第三十七話」を参照されたし)。
私自身は早池峰に行ったのはわずか二回、アポイにもたった一回だけです。またその方面の学者でも何でもない素人です。その素人が何をか言わんやですが、ざっと国内サイトを見渡したところ、この方面に触れているサイトは非常に少ないことに気付きました。
そこで今回、広く皆様にも蛇紋岩の山と花達の素晴らしさを知ってもらいたいと考え、本頁を企画致しました。これらの花達の多くは世界中でその山だけにしか無い、或いは非常に珍しい植物ばかりです。もし実際にこれらの山に登り、出会う機会がありましたら、とるのはどうか写真だけにして下さい。また決められた登山道以外には絶対に踏み込まないようくれぐれもお願い致します。このことは他の高山でも同じです。
蛇紋岩やかんらん岩など超塩基性岩の山とその植物を扱ったサイトをリストしてみました。
蛇紋岩リンク
山の名前 主な植物 参考サイト 北海道 礼文島 レブンソウ、レブンアツモリ、レブンシオガマ、ネムロシオガマ、ウルップソウ、エゾウスユキソウ、フタナミソウ、サクラソウモドキ、トチナイソウ、レブンコザクラ、レブンハナシノブ、イワベンケイ、レブンキンバイソウ、ミヤマオダマキ、レブンタカネツメクサ、チシママンテマ、リシリソウなど 礼文(花図鑑)
中村氏の高山植物写真館夕張岳 ユウバリソウ、ユウパリコザクラ、シソバキスミレ、ユキバヒゴタイ、エゾノクモマグサ、ナンブイヌナズナ、カトウハコベ、エゾノシモツケソウ、イブキトラノオ、シロウマアサツキ、ミヤマアケボノソウ、チシマノキンバイソウなど 一人歩きの北海道百名山by sakag氏/夕張岳 戸蔦別岳 ユキバヒゴタイ、カトウハコベ、ナンブイヌナズナ、エゾタカネセンブリ、ミヤマアズマギク、ミヤマシオガマなど アポイ岳 ヒダカソウ、エゾキスミレ、アポイタチツボスミレ、エゾコウゾリナ、エゾタカネニガナ、アポイアズマギク、アポイハハコ、アポイツメクサ、アポイマンテマ、アポイカラマツ、アポイヤマブキショウマ、アポイクワガタ、サマニユキワリなど アポイ・コレクション
さわやか自然百景/アポイ岳岩手 早池峰山 本頁(上の方)参照。 中村氏の高山植物写真館 群馬 至仏山 オゼソウ、ホソバヒナウスユキソウ、カトウハコベ、ジョウシュウアズマギク、クモイイカリソウ、シロウマアサツキ、タカネシオガマ、タカネバラなど 中村氏の高山植物写真館 谷川岳 オゼソウ、ホソバヒナウスユキソウ、カトウハコベ、ジョウシュウアズマギク、クモイイカリソウなど 新潟、長野 白馬岳 蛇紋岩は雪倉岳、八方山付近に露出。
クモマミミナグサ、ホソバツメクサ、ミヤマウイキョウ、ミヤマアズマギク、ミヤマムラサキ、タカネマツムシソウ、シモツケソウ、カライトソウ、ユキクラトウウチソウなど白馬1st/八方山の花達
早池峰山の※印の植物について 本頁作成にあたっては、次の資料を参考にさせて頂きました。 ミヤマオダマキ 東北では他に八甲田にも分布
チシマツガザクラ 東北では他に八甲田にも分布
エゾツガザクラ 東北では他に月山にも少数分布
チシマフウロ 東北では他に白神岳、焼石岳一部
サマニヨモギ 東北では他に八幡平一部に分布
ナンブイヌナズナ 早池峰以外では
北海道夕張岳、戸蔦別岳に少数分布
ヒメコザクラ 早池峰以外の北上山地蛇紋岩地帯にも
少数分布◆豊国秀男・編 山渓カラー名鑑 日本の高山植物/山と渓谷社・刊
◆宮脇昭・編 日本の植生 /学研
◆布施正直・著 花紀行6 利尻・礼文の花 /文化出版局
◆土井信夫・著 花紀行4 早池峰連嶺の花 /文化出版局
◆趣味の山野草(1985年4月号)アポイ岳の花の特集記事(写真、文:山崎隆)/月刊さつき研究社・刊
◆趣味の山野草(1993年11月号)夕張岳の花の特集記事(写真、文:中村義毅)/栃の葉書房・刊
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